営業トークの台本(スクリプト)の作り方|流れと例文

営業のトークスクリプトとは

トークスクリプトとは、営業担当者が商談や電話で話す内容をあらかじめ文章にしたものです。営業台本、セールススクリプトとも呼ばれます。俳優の台本のように一言一句を読み上げるためのものではなく、「どの順番で、何を確認し、どこへ着地させるか」を決めておくための設計図として使います。

スクリプトが手元にあると、担当者の経験差による成果のばらつきが小さくなります。また、うまくいかなかった商談の原因を「どのフェーズで止まったか」という形で特定できるようになります。個人の感覚に依存した営業では、この振り返りができません。

なお、同じ「トークスクリプト」でも、営業用とコールセンター用では設計が異なります。コールセンター向けは応対品質の均一化が主目的で分岐が細かく、営業向けは相手の課題に合わせて内容を変える前提で作ります。本記事では、営業向けのトークスクリプトを扱います。

営業トーク台本(スクリプト)が必要な理由

場当たり的な営業では成果が安定しません。トーク台本とは、商談の各フェーズで「何を・どの順番で・どう話すか」を事前に設計したものです。台本があることで、緊張しても話し忘れを防ぎ、チーム全体のトークレベルを均一化できます。

営業トーク台本の基本フレーム(5フェーズ)

台本は「つかみ→課題発見→提案→実証→クロージング」の5フェーズで構成します。

フェーズ目的時間の目安ポイント
①つかみ(アイスブレイク)場の雰囲気を和らげる2〜3分共通話題・時事ネタ・相手への質問
②課題ヒアリング相手の本音の悩みを引き出す10〜15分オープン質問・リフレイン
③価値提案課題とサービスを結びつける5〜10分事例・数値・ビフォーアフター
④実証・説得疑念を解消する5〜8分導入事例・デモ・Q&A
⑤クロージング次のアクションを確定させる3〜5分選択肢の提示・期限の設定

フェーズ別の例文|そのまま使えるスクリプト

①つかみの例文

「本日はお時間をいただきありがとうございます。先ほど御社のウェブサイトを拝見したのですが、○○の事業に力を入れていらっしゃるんですね。そのあたりのお話もぜひ伺えればと思います」

②課題ヒアリングの例文

「現状、○○の部分で課題を感じているとお聞きしましたが、具体的にどのような場面で困ることが多いですか?もし理想の状態があるとしたら、どんなイメージをお持ちですか?」

③価値提案の例文

「先ほど□□でお困りとのことでしたが、弊社の○○サービスは同様の課題を持つ企業で△△%のコスト削減を実現しています。特に御社の場合は、●●の部分で大きな効果が見込めます」

④実証の例文

「実際に導入いただいた◎◎社では、導入から3か月で○○が改善されました。今日は簡単なデモをご覧いただけますか?5分で全体の流れをつかめます」

⑤クロージングの例文

「今日お話した内容で、ご不安な点はありますか?もし解決できれば、次のステップとして今月末までにご判断いただくことは可能でしょうか?」

営業トークスクリプトの作り方|7つの手順と全体の流れ

ここでは、白紙の状態からスクリプトを完成させるまでの流れを7段階に分けて説明します。各手順に実際の書き方の例を添えていますので、順番に埋めていけば形になります。

手順1:対象となる顧客像を1人に絞る

誰に向けた台本かを決めないまま書き始めると、どの相手にも刺さらない文章になります。業種、従業員規模、担当者の役職、決裁の流れまで具体的に決めてください。

記入例:従業員50〜100名の製造業/窓口は総務課長/最終決裁は役員会/導入判断に2か月かかる

手順2:その顧客が抱える課題を5つ書き出す

自社が解決できる課題ではなく、相手が困っていることを相手の言葉で書きます。既存顧客の初回商談メモから拾うと精度が上がります。

記入例:「紙の申請書が回ってくるまで3日かかる」「担当者が辞めると手順が分からなくなる」「二重入力で月末が終わらない」

手順3:ゴールと、そこに至る中間地点を決める

初回商談のゴールは受注ではありません。「次回、決裁者を交えた打ち合わせを設定する」など、現実的な到達点を先に決めます。ゴールが決まると、逆算して聞くべきことが決まります。

手順4:5つのフェーズに台詞を割り当てる

前章の「つかみ→課題ヒアリング→価値提案→実証→クロージング」に沿って、手順2で書いた課題と手順3のゴールを配置します。この段階では箇条書きで構いません。文章として整えるのは後工程です。

手順5:想定される断り文句と返しを書き足す

「予算がない」「今は時期ではない」「他社と比較したい」「現状で困っていない」。この4つには必ず返しを用意します。用意がないまま本番に臨むと、その場で考えた言葉になり、結果が担当者ごとにばらつきます。

記入例(現状で困っていない):「承知しました。差し支えなければ、いまの進め方で一番手間がかかっているのはどの工程でしょうか。そこが変わらないのであれば、無理にご提案はいたしません」

手順6:声に出して読み、詰まる箇所を削る

書き言葉のまま話すと不自然になります。実際に声に出し、言いにくい語、長すぎる一文、専門用語を書き換えてください。一文は40字以内を目安にすると、話したときに息が続きます。

手順7:実戦で使い、結果を1行ずつ書き戻す

スクリプトは完成させて終わりではなく、商談ごとに更新するものです。「この質問で相手が話し始めた」「ここで沈黙した」を余白に書き足していきます。3か月も続ければ、最初の版とは別物になります。

台本を作る手順|4ステップ

  1. ターゲット顧客の課題を書き出す:「よくある悩み」を3〜5つリストアップします。
  2. 各フェーズの台詞を箇条書きで書く:完璧な文章より「流れ」を先に決めます。
  3. ロールプレイで試す:同僚相手に声に出して読んでみます。不自然な箇所を修正します。
  4. 実際の商談で使い、フィードバックを追記する:「ここで詰まった」「この質問が刺さった」をメモして台本を育てます。

業種別トークスクリプトのテンプレート3種

商材の性質によって、力を入れるフェーズが変わります。ここでは代表的な3つの型を示します。自社に近いものを土台にして、手順2で書き出した課題を差し込んでください。

1. 無形商材(コンサルティング・システム・サービス)向け

形がないため、相手は導入後の状態を想像しにくくなります。課題ヒアリングを長めに取り、相手の言葉で課題を復唱してから提案に入ります。

  • つかみ:「本日は、御社の○○の進め方をうかがったうえで、当てはまりそうな部分だけお話しできればと思っています」
  • ヒアリング:「いまその作業は、どなたが、どのくらいの時間をかけて行っていますか」
  • 提案:「先ほどの『確認の往復に時間がかかる』という点に絞ってご説明します」
  • 実証:「同じ規模の会社での進め方を、実際の画面でお見せします」
  • クロージング:「まず1部署で試していただく形と、全社で始める形、どちらが現実的でしょうか」

2. 店舗・来店型(サロン・教室・クリニック等)向け

その場で判断されることが多いため、短時間で不安を取り除く設計にします。価格より先に、来店後の流れを具体的に伝えます。

  • つかみ:「本日はどのあたりが気になってお越しいただきましたか」
  • ヒアリング:「これまでに試された方法はありますか。合わなかった点も教えてください」
  • 提案:「その内容でしたら、まずは○○からお試しいただく形をおすすめしています」
  • 実証:「同じお悩みの方だと、平均して○回ほどで変化を感じられる方が多いです」
  • クロージング:「次回のご予約、今週と来週でしたらどちらがご都合よろしいですか」

3. 法人向け(決裁者が別にいる)向け

目の前の担当者が決裁者ではない前提で組みます。担当者が社内で説明するための材料を渡すことが、そのままクロージングになります。

  • つかみ:「本日は導入の可否ではなく、社内でご検討いただく材料をそろえる場と考えております」
  • ヒアリング:「ご決裁の流れとしては、どなたがどの順番でご覧になりますか」
  • 提案:「役員会で問われそうな点を3つに絞って、資料をご用意します」
  • 実証:「同業他社での導入実績を、社名を伏せた形でお渡しできます」
  • クロージング:「社内でお話しされる予定はいつ頃でしょうか。その前日までに資料をお送りします」

スクリプトを使うときの話し方

よくできたスクリプトでも、読み上げてしまうと成果につながりません。話し方の面で押さえておきたい点を挙げます。

  • 手元に置くのは見出しだけにする:全文を見ながら話すと視線が下がり、相手の反応を見逃します
  • 質問のあとは黙る:沈黙を埋めようとして自分で答えてしまうと、相手の本音が出ません
  • 相手の言葉をそのまま使う:「効率化」ではなく、相手が言った「二重入力」をそのまま使います
  • 話す速度は1分300字を目安にする:緊張すると速くなるため、意識して落とします
  • 台本どおりに進まないことを前提にする:順番が入れ替わっても、聞くべき項目が埋まれば問題ありません

質疑応答の例文

スクリプトの最後には、質疑応答の受け方も入れておきます。答えの内容以上に、受け方が印象を左右します。

  • 質問を確認する:「ご質問は、導入後の運用体制についてという理解でよろしいでしょうか」
  • 結論から答える:「結論から申し上げますと、御社側で新たに人員を置いていただく必要はありません」
  • その場で答えられないとき:「正確にお答えしたいので確認し、本日中にメールでご回答します」
  • 質問が出ないとき:「よくいただくご質問が3つありますので、先にお答えしておきます」

まとめ|台本は「会話の設計図」

営業トーク台本は丸暗記するものではなく、思考の流れを設計するためのツールです。5つのフェーズを頭に入れ、相手の反応に合わせて柔軟にアレンジすることで、自然な会話の中で成果につながるトークができます。

実際の商談場面でのプレゼンを高めたい方は、営業プレゼンのコツ|成約につながる話し方と構成もあわせてご覧ください。

チームで営業トークを体系的に学びたい方は、研修・セミナーの詳細はこちらをご確認ください。